流行りのSNSではありません。リアルで。
ある日、友だちから「踊りたい?」
私「うん?一緒に踊ろう?」
友「明日踊りにいくねん。いっしょに行く?」
私「行く!」
ということで、私はどこで誰とどんな踊りかも知らずに参加することにした。最悪、怪しいセミナー的な壺売り的な集会ならどうかいくぐって帰ってこようかシミュレーションしながら向かった。全力ダッシュ以外に思いつかんかったけど。
近所の小さい体育館のような場所にぞくぞくと集まってくるママたち。こどもは連れてないのに、漂う母性臭。間違いなくママだ。そうであってくれ!それならこども関連の話題でなんとか会話できるかもしれへんし!あ、いや、仲良くなってもいいんだっけ?やばい!もう洗脳が始まっているのか!?ん?なんだ、シルバーヘアのイケメン入ってきたやん。んん?メンじゃ…ない?
ほかのママ「先生〜、おはようございます〜」
先生「あぁ、おはよう」
私「(めちゃハスキーボイスのマダムやあああああん!)お、おはようございます」
友「こちら、新しく入ったまるえです。」
私「(え、今日はお試しじゃなかったの?)え、あ、よろしくお願いします。」
私は、すっかり入会?することになっていた。まだ、大丈夫だ、ハンコは押してねぇ。サインもしてねぇ。まだ逃げられる。しまったあああああ!友につられて参加者名簿に名前書いちゃった!今日の会費(?)もはらっちゃったあああ!いや、まだ、大丈夫だ、入会金とは書いてないし、大金じゃないし、勉強代だと思えば安いもんだ。よし、退路確認!いつでも逃げれるぞ!って、閉められてるぅぅぅぅ!ま、まだ、大丈夫だ。鍵は閉めてなかったし、荷物を犠牲にすればなんとか……。
などと脳内はパニック状態だったが、顔は澄ましたもんだった。はずだ。ダンスするのにもってこいな一面の壁に大きな鏡。しかし自分がどんな顔してるか見る余裕はなかった。なぜならこれから私は、洗脳されるか壺を買わされるのだ。扉への最短ルートを常に捉えつつ、ストレッチが始まった。
「いたいいたいいたい…」「かったいわぁ」「その姿勢できへん」「昔はできてんけどなぁ」もう共感の嵐。ただストレッチしてるだけでめちゃしゃべる。なにこの和気あいあい空間。めちゃ久しぶりやん。楽しいやん。はっ!いかんいかん。平常心を保たねば!寝首を掻かれてしまう。先生が鏡の前に立ちその後ろにママさんたちが並んでゆっくりひとつずつ動きを真似していく。ある程度進んだらまとめて通しで踊ってみる。曲に合わせてみる。やだ、なにこれ、久しぶりやのに新鮮で脳も体もここ数年使ってなかった部位がフル稼働でええやん。週一でこれやったら運動不足解消にも役立ちそうやし。
先生「どうやった?」
私「なんかよくわからんけど楽しかったです。」
先生「ほな入る?」
私「はい」
他ママさん、歓声、拍手。
こうして私は踊ることにした。私を洗脳するなんてちょいもんよ。
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